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女性の日と花売り

yH5BAEAAAAALAAAAAABAAEAAAIBRAA7 - 女性の日と花売り
 3月8日。(Festa della donna)
 イタリアでは「女性の日」とされていて、男性は女性に「ミモザ」という花を贈ります。
  僕は車を運転していて、交差点で信号待ちをしていると雨に打たれながら花を売っている男に気が付いた。助手席の窓を開けると濡れた花を3束突っ込んできて「3つで10ユーロだ」と男は言った。肌寒い春の曇り空の下に佇む浅黒い男を見て、もしかしたらバングラデッシュ人かもしれないと僕は思った。「ひとつは幾ら?」と僕は聞いた。「4ユーロだ」と答えるので僕は5ユーロ札を渡し、信号が青に変わったので車を発進させた。
 イタリアの道端で花売りをしている人達はなぜだかバングラディッシュ人が多い。12年前のローマ、ひとりの花売りをしていたバングラディシュ人の青年をローマの春の夕暮れと共に思いだす。
 僕はアジアを3カ月ぐらい回ったあと、ビーマン・バングラデッシュという当時世界一胡散臭いと呼ばれた航空会社でローマに降り立った。カプチーノのあまりのおいしさにびっくりし、セスティーナ礼拝堂を見て人類がこんなものを作れるなんてと感動したイタリア2日目の夕昏ことだったと思う。
 イタリアに来てみたものの僕は旅を続けるお金もなく、バチカン広場に行って一番安いたべものを屋台で聞くとポップコーンだと言われた。僕はポップコーンを買ってバチカン広場の雄大な景色を眺め、どんなに食べても空腹が埋まらないポップコーンを必死で胃袋に放り込んでいた。そうするうちにどこからともなくハトがやってきて、ポップコーンを投げてやるとローマ中から飛んできたんじゃないかと思うほどものすごい数のハトが僕の目の間にやってきた。結局ポップコーンの3分の1ぐらいを僕が食べ、残りは無数のハト達によって速やかにローマの歴史の中に呑みこまれていった。
 その日の夕方、宿に帰る途中に「花を買ってくれないか?」とひとりの青年に呼び止められた。教会に面した大きな広場で、僕はその青年としばらく話をした。彼がバングラデッシュ人であること、僕が数日前にバングラデッシュにいたこと、いろいろと話が進んだがその時の僕は本当に花を買ってあげるお金を持っていなかった。そして僕は明日の夕方、同じ時間(5時ごろだったと思う)に僕はかならずここに戻ってきて花を買ってあげる約束をした。
 その次の日、僕はその広場で3時間ほど時を過ごした。結局その花売りのバングラデッシュ人の青年は現れなかった。でも今にして思っても、彼を待つと言うのはただその場で時間を過ごすための口実に過ぎなかったように思える。今でも僕の記憶のベールに焼き付いているのは、そこにあった美しいローマの夕暮れだ。教会の広場の前ではいろいろな人々が行き交い、異邦人の僕にとって日常と名のつく全く別の世界の側面だった。広場の右斜めぐらいからゆっくりと太陽が傾き始め、それと共にオーストラリアの雄大な大自然の夕暮れでもなく、アジアのエネルギッシュな焼けつく太陽でもない、今までに感じたことのないミルク色の夕暮れが歴史の織りなす風と共に、古い記憶をゆっくりと引き剥がすように襲いかかっていた。乳母車を押す叔母さん、大声で話す若者のグループ、別世界の日常を引き延ばされた逆方向から眺めるように僕は教会の前の階段に座り、深い歴史が生み出す幻想的な夕暮れに包まれていた。
 あれから12年経って思うこと。
 男達は相変わらず、いろんな理由の元に「花」を売り買いしている。

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コメント

  1. あじおかかいこう より:

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    素敵なお話ですね。佐武さんのこゝろは変わりませんね!(^^)

  2. 佐武 辰之佑(さたけ たつのすけ) より:

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    あじおか さん
     どうも、こんにちは。
     いつもありがとうございます。
     ミラノは例年に比べとても雨が多く、まだ冬のような気候が続いております。

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