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次のステージへ

yH5BAEAAAAALAAAAAABAAEAAAIBRAA7 - 次のステージへ
日曜日の夜9時。僕はこの文章を書き始めた。
 おととい新しいアパートの準備が終わり、入居して4カ月にしてようやく家が片付いたということになる。気が抜けたのか体調を崩し、仕事も少し休んでみることにした。ここ数カ月、僕は必死に頑張ってきたと思う。雑誌の仕事、アテンド、ベビーシッターをこなしながらほぼ毎日ブログを書き、家の改装に追われた。今週和室の壁を塗り替え、障子を張ってようやく何もかもが終わったような気がした。そしてこれでようやく準備が整ったということになる。
 2月にバイクで転んだことが僕の人生を変えるきっかけになった。娘の母親に男がいることがわかり、それから僕は人生を変えようと思った。目の手術をし、アパートを引っ越し、雑誌の仕事を始め、子供とのごたごたもすっきりしたい。初めにそう思ったときから約8カ月。こうして僕はある意味では思い通りに自分の人生を変えた。それなりに頑張ったし、努力もしたけど、やっぱり運もよかったんだろうと思う。実際にこの家に引っ越してきてからというもの良いことが続けて起こっている。今まではその運をため込んでいたような暮らしだったし、このままこの波に乗り続けていきたいと思う。
 考えてみると僕は世間一般の娯楽や楽しみというものから離れたところにいたんだと思う。テレビも見ないし、友達ともそれほど会わない。とにかくこの数カ月は映画もほとんど見なかったし、仕事以外ではあまり外にもでなかった。とにかくやらなくてはいけないことがたくさんありすぎてほとんど休む暇もなかったし、娯楽を楽しめる精神的な余裕もなかった。やはり僕はせっかちなのですべてがそろわないとなかなか落ち着かないんだ。
 そして昨日、10月10日大安吉日にスーツを着て娘の母親の両親のところへ話に行った。こうしたきちんとした話し合いは僕にとって彼女と別れた時以来、2年以上ぶりのことだった。僕はできるだけ素直に自分がどうしたいかをはなし、向こうの言い分も聞いた。とにかくこれ以上いがみあっているわけにはいかない。問題は誰や何が正しいとか間違っているということではないはずだ。僕はすっきり生まれ変わりたいと思っている。これで約3年にわたった苦しみから解放されることを願っている。
 最初にイタリアに移住してきたときはこうして今の僕があることさえ想像できなかった。僕はいつもひとりで泣き続け、そして自分の世界に閉じこもっていた。まさに暗黒の時代と呼んでもいいだろうと思う。僕をそれでも救ってくれたのは母の残してくれたお金のおかげだった。とにかく僕はお金のことは考えず生きてゆくことだけを選んだ。僕は自分が死んだつもりになってとりあえず2年は生きてみようと思った。金は申し訳ないけどあるだけ使えばいい、死ぬということよりも本当にましなのか、そして2年で僕を取り巻く環境がどのように変わるのかそれを見てみようと思った。
 こうして書いているとなんだかすでに遠い出来事のことのように感じる。家が完成した昨日あたりから、なんだか僕はずっとこの環境を待ち続けていたんだというような気持が芽生えてきた。これこそが僕が望み、待ち続けてきた場所であり、ようやくここにたどり着いたんだというような気がした。僕は何カ月ぶりかにとても静かで安心した眠りについた。もしかしたら何年ぶりかもしれない。
 そしてここでなら僕はやってゆけそうな気がしている。ようやく手に入れた僕の望むべき場所。なんだか帰ってきたというような不思議な感覚さえあった。もしかしたらこれでようやく僕は自分自身を取り戻せたのかもしれない。ぐるっと回って、また僕自身に。
 でもその中で僕は大きな渦に巻き込まれ、そして同じように何かを巻き込んだんだろうと思う。それは今までのように適当に海外をフラフラしているのとは全く違う価値観を持った世界だった。僕はそこでしか知れないことを学び、そこでしか触れあうことのできない人々と知り合った。ある意味ではより現実的になるためのプロセスだったと言えなくもない。もちろんそれを推し進めてくれた基盤となるエネルギーは娘という存在だっただろうと思う。それは彼女に感謝しなくてはいけない。
 僕はこれで深い傷からようやく立ち直ったんだという気がしている。誰もほめてくれないけど、(たぶんかーちゃんは天国でほめてくれるんだろうけど)とにかく僕は耐えきった。この現実から逃げなかったし、僕はずいぶんと成長したんじゃないかと思う。おそらくは急激に、そして追い込まれた龍が生まれ変わるためにあがき続けるみたいに。逆に言うと僕はこれで何があっても生きてゆけるような気さえしている。もちろん今の仕事の基盤を作るためにかなりの時間とエネルギーとお金を使ったわけだからこのままできるだけのところまでやっていこうと思っている。
 自分でも気がつかなかったけど、とりあえず僕は文章を書くという能力があるみたいだ。文章がうまいと思ったことはないし、これからもないだろうけど、それでもこうして書くことは好きなんだろうと思う。実際、家が落ち着いて何もかもが準備できて、最初に始めたのはこの文章を書くことだった。
 不思議なことにどこからか花火の音が聞こえる。まるでついにミラノが僕を受け入れてくれたようにさえ思う。
 常に今と言う瞬間の勝負。その中に僕は次のステージを見つけるだろう。

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